親の性行為を見たことでセックスに嫌悪感があります、というお悩みに公認心理師が回答

みなさんから投稿してもらったお悩みに答える大好評の人気シリーズ第6弾。

皆さんの悩みに似ていれば、回答を参考にしてみてください。また、一度も婦人科で検査を受けてない方は、何よりもまず受診してみて下さい。

今回は寄せられた相談の中から、おそらく似たように悩む方が少なくないと思われる幼少期の体験からくる悩み。ふあんふりーの監修者である公認心理師の潮英子さんにきいてみました。

回答者の紹介

潮英子 公認心理師
こぐまカウンセリング・アソシエーション代表
著書「女性カウンセラーが教える50代からのhow to SEX」(光文社)性行為に対して不安や恐怖、ネガティブな気持ちがある方に向けて、改善の糸口となるような情報をお伝えしていきます

相談「性行為に嫌悪感、幼少期に親の行為を見たのが原因?(40代・女性)」

相談者Aさん

この歳でまだ性行為に対して嫌悪感があるのは家庭環境や育ちもありますが、親の行為を幼い頃に見てしまったことも大きいと自分では感じています。行為といってもほんの一瞬の前戯で「子どもたちがいるから」ですぐに止めてましたが、幼くても見てはいけないものを見てしまった感はあったしそれがいまの嫌悪感に繋がっていると思ってます。普通に性行為を楽しめない自分がつらいです。
(40代・女性)

お答え

Aさん、ご相談ありがとうございました。
きっと長い間このことで悩まれてきたのでしょう。

でも今回ここでご相談くださったのは、楽しめるようになりたい、そのために過去と向き合いたいと考えられたからだと思います。

実は「親の性行為を見たことがトラウマ」と言う方は少なくありません。
夫婦間の性行為自体は悪いことではなく、それを見てしまったことを悩んで誰かに話しても、「親がセックスしたから今のあなたという命が存在しているのだ」「いがみ合っている両親より、愛し合っている両親の方がいいでしょう?」「親も性欲を普通に持っている人間であることを理解しなければいけない」などと言われ、余計に悩みを深めてしまう人もいます。

子どもが親の性行為をどう受け止めるかはその子によっても異なりますが、現在では、子どもに性行為を見せることは児童虐待とみなされるようになっていますので、親の立場にある方には気を付けてほしいところです。

親の性行為にショックを受ける理由

子どもはなぜ親の性行為にショックを受けるのでしょうか?

性教育の不足

「セックス」というものの存在を知らない幼少期に行為を目撃した子どもには、親の性行為は暴力的な恐ろしいものに見えます。

親の神聖なイメージの崩壊

10歳前後になれば性行為の意味を知っている子どもも多いでしょう。しかしそれを知ったのがネット上の誤った情報やAVまがいの映像であった場合、それらと優しい両親が結びつかずショックを受けてしまいます。親との関係が良好である子どもほど、このような幻滅感が強いように思われます。

親への不信感

逆に両親が不仲で心を痛めてきた子どもの場合、親に嘘をつかれた、裏切られたと感じます。

などが考えられます。

あくまで一般論ですが、モヤモヤした感情がある時、その感情がどこから来るのかを検討し言葉で説明してみると自己理解が進みます。

不快感のことを「生理的嫌悪感」と呼ぶ人も多いですが、その漠然とした嫌悪感が何に由来しているのか考え、何に対して「悲しみ」「軽蔑」「怒り」「羞恥」などの感情が湧いてきたのかが明らかになると、過去を少し冷静に眺められると思います。

しかし、もしトラウマ症状(フラッシュバック、抑うつ感、神経過敏、否定感情など)が継続している方は、1人で対処しようとせず専門のトラウマ治療を受けてみてください。

セックスを楽しめない理由

今回のご相談は、「性行為を楽しめない自分がつらい。幼いころに親の性行為をほんの一瞬見てしまったことが影響しているのではないか」というものです。

「セックスが楽しめない」原因として、性交痛などの身体上の苦痛がある場合を除いては、こんなことが考えられます。

パートナーとの日常の関係性自体に不満がある

夫が支配的である、家事育児の分担が不公平、会話が全くないなど、対等なコミュニケーションが取れていないのに、セックスだけすることに違和感がある。

【対処法】この場合は、パートナーとの関係性の改善を試みなければ、セックスだけが楽しくなるということはまずないと思います。

自己イメージとのギャップに気恥ずかしさを覚える

仕事ができ、男性と伍して活躍してきた女性に多く見られます。ベッドの中でいきなり女性的な仕草や声を上げる自分が恥ずかしく行為に集中できない、と言います。

【対処法】人は多面性があるからこそ魅力的なのだと理解し、自己イメージにとらわれずにどんな自分も肯定できるようになると改善することが多いです。

両親の関係性に、自分とパートナーを重ねる

両親が不仲な家庭に育った子どもは、“自分はあんな風になりたくない”と反発しますが、いざ自分が家庭を持ってみると、親と同じようなコミュニケーションパターンを取っていたりします。相手への不満を抱えているのに性行為をしていた親に自分を重ね合わせ、同様に自分を汚いと感じてしまうのです。親の性行為を見た記憶が影響するのは、このケースが多いように思います。

カウンセリングの活用で克服できることも

セックスの本質は相手とのコミュニケーション。前向きなコミュニケーションには、楽しさや安心、信頼など前向きなエネルギーが必要です。今回ご相談いただいた内容は、一見性交痛とは関係ないかもしれませんが、心に引っかかるものがあり性生活が楽しめないことはとてもつらいものです。
人によっては勇気を出して誰かに相談しても「大したことじゃないよ」とあしらわれたりてしまい、気にする自分がおかしいのかな、とご自身を責めたり、楽しめないとパートナーに申し訳ないからと、楽しいフリをしたなんて経験があるかもしれませんね。そんな風に何重にもつらさが重なってしまうケースもありそうです。

相談者さんは、当時どんな気持ちだったのか、自分にどんな影響があったと感じているかを見つめる一方で、今パートナーとどんな関係を築いているのか、その中で性行為が(自分や自分たち夫婦にとって)どのような意味があるのかなど語っていくことで、「過去の記憶」と「今楽しめない気持ち」の結びつきを解いていくことがカウンセリングの場でできます。安心して語れる心理士がいるカウンセリングルームでカウンセリングを受けるという方法があることを知っていただきたいと思います。

まとめ

親の性行為を目撃した経験がトラウマとなるケースは決して珍しいものではありません。このような出来事がショックを与える理由は、個々の経験によって異なりますが、一般的には、親の理想像の崩壊や不信感などが挙げられます。

セックスが楽しめない状況に直面する理由も多岐にわたります。例えば、パートナーシップの質、自己イメージとのギャップ、過去の親の関係性を現在のパートナーシップに投影してしまうなど、解決が難しく、複雑な要素が影響していることも。

セックスに関するトラウマや難しい性生活には様々な要因が影響しています。専門家の協力を得ることで、健康で充実した性生活が築かれる可能性があるので検討してみてください。

お悩みの相談は随時受け付けています、こちらからどうぞ。


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ふあんふりー編集部
ふあんふりー編集部FuanFree
WHOなどの国際機関が定める「性の健康」の概念に着目し、私たちの編集部は「痛みのない、喜びのある性生活のためにー」をモットーに掲げています。総医療監修の医師をはじめ各方面の専門家との協力を通じて、性交痛に関する信頼性の高い情報を提供しています。私たちは性の健康に対する理解を深め、読者が充実した性生活を享受できるよう、包括的で専門的なコンテンツをお届けしています。