ゼリーやジェルなどとも呼ばれる潤滑剤は「濡れないときに使う」、「年齢が上の人たちが使う」、どうやらそんな印象があるようです。しかし、「若くても」、「濡れていても」、使っていい一種のコミュニケーションツールです。
健やかな性生活をおくるには、痛みのトラウマを作らないこと。性交時に痛い思いをすると、セックスに消極的になったり、嫌いになることもありえます。潤滑剤は乾きを感じたら途中からでも使ってもいいことを知っておいてください。
性交時に分泌されるうるおいは、女性ホルモンのエストロゲンが関係しています。エストロゲンが不足していると性的に興奮しても濡れないことがあります。また産後やお薬の副作用でエストロゲンの分泌が抑制されてしまうことがあります。詳しくはふあんふりーの以下の記事で説明しています。
さて本題の潤滑剤を選ぶときに知っておきたい、種類やポイント、そして注意点などを、ふあんふりーの視点で挙げていきます。
1.意外に知られていないアダルトローションと潤滑剤の違い
男性がマスターベーションの時や、ボディ上でヌメリを楽しむ時に使うアダルトローション。潤い不足のときに間違って使うと、かえって乾燥を招き、腟炎などのトラブルに繋がることがあります。
潤滑剤もアダルトローション(ラブローションとも最近呼ばれている)もどちらも、性的なことに使う透明な液体なので、同じ棚やカテゴリで販売されていることが多くあります。しかし、見た目は似ていても違う成分、違う目的の商品。注意が必要です。
アダルトローションは、ポリアクリル酸ナトリウムという成分がベースのものが主流。ヌルヌル感をボディ上で楽しむ、マスターベーション用のグッズとして人気です。

特徴は、粘度が高く、糸を引いたり、ボトルを逆さにしても、液体がポタポタと落ちてこないほど粘り気が強いこと。潤滑剤としては不向きのものがほとんどです。また潤滑剤と比較すると乾きやすく、水分が蒸発するとポロポロと消しゴムのカスのような感じになります。ボディ上で遊ぶにはとても楽しいツールですが、挿入の時は潤滑剤を使うように心がけてください。
成分の記載はだいたい含有量が多い順番に記載されています。潤い不足のために購入する時は成分を確認して、先頭の方にポリアクリル酸ナトリウムが書かれていないものを選びましょう。
2.潤滑剤の種類、使う理由に応じてチョイス
困っているから潤滑剤を使いたいのに、なんとなく選んでしまい「これ違う」となると、悩みが解決しないままツライですよね。だからこそ、潤滑剤探しをする前に、ちょっとだけ時間を作って考えて欲しい、「なぜ使いたいのか」というあなたの具体的な理由。
例えば
- 入り口が狭いから、スムーズに滑らせたい
- 乾きを感じるので、潤い補充したい
- 摩擦による負担を減らしたい
- 終わったあとのヒリヒリ感を回避したい
- 最初だけ濡れづらい、を解消したい
- 楽しむために使いたい
- セルフプレジャー(マスターベーション)、ラブグッズ、月経カップや腟トレグッズに活用したい
潤滑剤はベースとなる成分別に分かれています。それぞれのベースには違った良さがあり、自分のニーズに合うベース選びから始めます。
ウォーターベース | 一般的なベース。潤滑力が高いもの、植物由来の成分、肌刺激が少ないもの、オーガニック、香りつきなどバリエーションが豊富。商品により潤滑度に差がある。途中で乾きやすい。 | 潤い補充、濡れづらい、うるおい補充、ヒリヒリ対策、楽しむため、グッズ、セルフプレジャー、腟トレ |
シリコンベース | 水を含まないため持続性が高い。非常によく滑るためアナル性交や入り口をよく滑らせたいときに向いています。油っぽいベトつきがあり、使用後は石鹸と温水で洗い流しが必要。シリコン製のグッズには使えない。 | 入り口スムーズ |
ハイブリッド | ウォーターベースにシリコンをブレンドした混合タイプ。ウォーターベースの使い心地にシリコンの滑りや持続性を持ち合わせている。シリコンベースのべとつきや質感が苦手でも使いやすい。 | 入り口スムーズ、うるおいのプラス、ヒリヒリ対策、更年期以降の深刻な乾燥、摩擦の負担を減らしたい |
ウォーターベースでしっかり滑るタイプ
3. 潤滑剤と相性を考えるとき、何通りかある
過去に潤滑剤を試したことがあり、それほど違いを感じなかった経験がある方もいるでしょう。この場合、組み合わせや相性が合わなかった可能性も考えられます。相性と言っても、自身と潤滑剤の組み合わせだけでなく、同時に使用するコンドームとの相性も重要です。さらに、たっぷり濡れている場合でも、個人の体質や体調によっては分泌物がサラサラなこともあります。粘度が不足していると摩擦を感じることもあるため、適切な潤滑剤の選択が必要です。また、質感も好みに影響します。シリコンベースの潤滑剤は滑りが良いと言われていますが、油っぽい感触が苦手な方もいます。実際に試してみないとわからないこともありますが、潤滑剤が合わないと感じた場合、次回の選択には自身の体に合うものを見つけるために相性を考慮することが大切かもしれません。
コンドームの種類や選び方はこちらの記事を参考にしてください。
4.代用できるものは?
マッサージオイル、ベビーオイル、食用油など、体に使ったり、口にしたりするものは安全に感じますが、注意が必要です。オイルはラテックス製のコンドームを破損させる可能性があるため、代替として使用することは避けてください。
5.使用タイミングと量の目安は?
濡れ不足を感じた場合は、直前に使用することをおすすめします。痛みや不安があると、たっぷり使いたい気持ちになるかもしれませんが、しっかり滑る潤滑剤であれば、最初は10円玉ほどの量から始めて、自分にとっての適量を調整してください。
途中から乾くときは、途中からの使用/つぎ足すこともできます。「摩擦が原因?彼女がヒリヒリ痛む性交痛はどうすればいい!?」にあるタイミングや方法を参考にしてください。
6.使うときの注意点
どのメーカーの潤滑剤でも安全に使うために、以下の注意点を守りましょう。
・使う前に手を石鹸洗浄
・一度手に出した潤滑剤は容器に戻さない
・腟など洗えない場所に使う場合は、つけすぎず適量に
・開封後3~6か月を目安に使いきる、それを過ぎたら新しいものに
・未開封でも消費期限(容器に記載がある場合)が過ぎていたら使わない
7.潤滑剤を使っても効果ない!?ときの原因と対処法
- 手荒なタッチや激しいピストン:女性は激しいセックスで傷つく
- 早すぎる挿入タイミング:性反応から知るセックスの基本
- あわない体位:プロに聞く!性交痛を回避する体位の工夫
- 緊張や不安などで性器がこわばり挿入しづらくなる:セックスが怖い、ボディコンプレックス、挿入されても最後までできない
- からだの構造や外陰部の炎症:構造的な症状、処女膜や腟前庭部の治療の話
まとめ
潤滑剤の選び方や使い方についてまとめました。潤滑剤は、濡れが足りない、滑りが足りない時の活用できるアイテムですが、濡れ不足ではなく痛くて使用を検討しているときは、その前に必ず婦人科を受診して、病気や炎症が隠れていないことを確認してほしいと思います(もちろん、何らかの異常がある場合には治療もしてほしいです)。
セックスはこころとからだをオープンにして触れ合うコミュニケーションです。病気や炎症といった不調がなくても、心配事があると性的興奮が起きづらく結果的に濡れない状態をつくったり、からだや性器がこわばり挿入しづらくなることがあります。こういう場合は、潤滑剤を使用しても痛みが出るものです。セックスは「私もOK、あなたもOK」という状況でしか良いものになりません。気乗りしないときは無理をせずセックスをお休みする勇気や本当の原因について二人で考えていくことも大切です。お互いが楽しめる性生活につながる解決のいとぐちがきっと見つかるはずです。