多くの女性にとって、お産のときの会陰切開や会陰裂傷、腟裂傷などの傷は健康課題のひとつとなり、性生活への影響が懸念されます。FuanFreeでは「性の健康」というWHOをはじめとする国際的な機関が提唱する健康の概念を軸に情報をお届けしています。
今回は、その性の健康を同じように大切にして、勉強会、講演会、学会などさまざまな機会で一緒に学んできた友人である、水嶋かおりんさんの体験談をお届けします。彼女は初産のときに外陰部の損傷と腟裂傷を経験しました。第2子を望んでいたかおりんさんは、知識がなかったら乗り越えることが難しかったかもしれないと振り返ります。決して簡単ではなかった、セックスが再びできるようになるまでの道のりを共有してくれました。お話には医療に関する情報は含まれていません。あくまで個人の体験談であることをご理解のうえお読みください。性生活再開に向けた一歩を踏み出す際の参考にしていただけたらと思います。
目次
経験談をシェアしてくれた専門家
初期の回復期間
退院後、医師からはだいたい1ヶ月は性行為を控えるようにとのアドバイスがありますが、腟の裂傷を経験したため、パートナーと相談して長めにセックスをお休みすることに決めました。
性生活の再開と違和感
4ヶ月ほど経ったとき、そろそろセックスを始めてみようかとなりました。でも違和感があり、挿入すると痛むだろうと予測していたので、やさしい触れ合いだけにとどめました。半年後、ようやく自分が上になりながら自分のタイミングで行うスタイル(騎乗位)で再び試みましたが、やはり痛みを感じました。
痛みとの向き合い方
1年かけて少しずつなじませつつ、多少の痛みと違和感に耐えながらセックスにトライしました。二人目の妊娠を望んでいたため、我慢しながらでも、多少の痛みを我慢して始める努力をしました。もしこれが二人目を産んだ後の出来事だったら、セックスレスになってもおかしくない経験だったと思います。
プロが実践した、痛みを少なくする工夫
指カバーの活用
会陰に痛みを感じやすくなっているので、前戯の際にできるだけゆっくりと入り口を広げるように努力しました。直接指で触れるのではなく、指カバーを使いました。
ちょっとでも「痛いかも」「ひっかかるかも」と恐怖心があると力が入って全然広がらず受け入れられなくなってしまうので、引っ掛かりが少ない指カバーを活用して痛みが伴わないような快適な状況を整えた後で始めました。
FuanFreeで扱っている指カバー
findom フィンガーグローブ
馴染ませながら同じ動作を繰り返す
なるべく時間をかけてゆっくりと「ちょっと入れ、戻してからマッサージする」を繰り返しました。潤滑剤も使いました。挿入する際は、必ず騎乗位で自分(女性)のペースで拡張していきました。自分で入口に当てて、一番大変そうなところに手をそえて、男性器で押すようにして、下側を広げ、上側を広げ、左右を広げ、少しずつ進んで、戻って、進んで、戻って、というように進めました。馴染ませてから本格的に動き出すというアプローチです。拡張というと指に焦点が当たりがちですが、この方法なら楽しみながら広げていけます。
コンドームが引っかかることがあるため粘膜が乾燥していると怪我をしやすくなります。ちょっと難しいかもしれませんが、引っかかる場合は、自分で戻し、潤滑剤を足して再び挿入を試みるようにして、また引っかかった場合、一旦戻して、ちょっと馴染ませます。パートナーと一緒に試行錯誤する感じです。
性生活への影響
今でもセックスで、突っ張る感じや痛みが発生することがあります。挿入も短時間なら痛みはありませんが、長い摩擦が続くと痛みを感じるので、すぐに中断するスタイルを採用しています。慎重な体位選びや中断をすることで、痛みを最小限に抑えながら性生活を続けています。
違和感への工夫
違和感があるけど痛いわけではないなら、定期的に腟拡張をひとりの時にします。行為中にも痛みが走る場合は、十分になじませてマッサージをしてあげてください。日ごろから股関節のストレッチをするのも良いです。最初の頃は気持ちよくなることよりも、痛みをなくすことが圧倒的に優先になると思います。今は痛みもなくセックスを楽しむことができます。ただ出産から数年経過していますが、今でも挿入、摩擦の時間が長くなると、つっぱりを感じる部分に痛みを強く感じるようになります。体位を変えるなどの工夫をしても、無理な場合は「ちょっとここでおしまいにしよう」ということもあります。中断を恐れないという気持ちでからだと付き合っていっています。
知識と協力がなければセックスレスだったかも
出産時の傷はその後の性生活にも影響を与える厳しい体験でした。「皮膚や粘膜には伸展性があり、ゆっくり時間をかけると伸びる」などの知識や、パートナーの理解と協力がなければ、痛みのない性行為に辿り着くのが難しいことがあるかもしれません。痛みが改善しなければセックスレスになるのは当然だと感じました。私は2人目の子どもを望んでいたため、痛みを我慢することもありました。すごく痛い場合は中止しましたが、少しの痛みなら我慢することが普通でした。妊娠を目指してセックスをするカップルが、目標達成後にセックスをしなくなることも理解できます。
子育てと性生活のバランスを考える
出産後は子育てが大変で、一晩中ゆっくり眠れることは滅多にありません。わずかな休息を取るのに精一杯で、セックスレスは避けられない状況と言えます。セックスを再開する場合でも、まずは普通にマッサージの一環としてお互いを思いやることから始めるのが理想的かもしれません。二人目の出産は傷跡が再び裂けることもなく、比較にならないほど楽なお産でした。現在、7歳と5歳の子育て中です。お産でできた傷の後遺症がある場合の性生活の再開は、あせらず、ゆっくりのスタートを覚悟して、少しずつ楽しみながら、「前に進んで、少し戻ってもいい」という感覚で二人で歩むのはどうでしょうか。
まとめ:編集部より
産後の性生活を慎重に再開したかおりんさんの経験談いかがでしたでしょうか。再開後も、痛かったらお休み期間を作る、行為中でも「痛かったら今日はおしまい」と潔く中断することを二人で決めていたようです。それでも二人目の妊娠のために痛みの我慢をしてしまったとおっしゃっていましたね。痛みのトラウマは、身体だけでなく心にも傷を残すことがあると言われています。無理をせず、参考できそうなことや困ったときに取り入れらそうなところを試してみてください。また「産後の性交痛」でも、医師監修で原因や対処法を解説しているので、ご参考にしてみてください。
水嶋かおりん・メイクラブ・アドバイザー
「性風俗で働く人も、利用する人も、安心できる知識と技術が大切」と考え積極的に性の健康に関する知識を習得し、メイクラブ・アドバイザーとして、業界で働く人たちや一般の人たちに安全な性行為や技術を伝える講師を務めた専門家。
著書:「私は風俗嬢講師」「性風俗で働いたら、人生変わったwww」
ツイッターアカウント:@kaorinmizushima