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性の健康とは?
ふあんふりーは、性交痛(性交時の痛み)を健康問題と捉えています。その背景にあるのは「性の健康」という考え方です。
「性の健康、ってなんのこと?」「聞きなれない言葉だから、よく意味がわからない」、そんな風に思う人も多いかもしれません。
「性の健康」とは、いったい何なのでしょうか?
本サイトの医療総監修者であり、世界性の健康学会や日本性科学会等でも活躍している産婦人科専門医・早乙女智子先生のお話をもとにまとめてみました。
「性の健康」はどうやって成立してきたの?
1994年に国連の会議(通称「カイロ会議」と呼ばれます)で「リプロダクティブヘルス・ライツ」(性と生殖に関する健康と権利)というものが決議されて、産む産まないに関わらない女性の権利として認められるようになりました。
避妊や中絶に関する権利がそこに含まれたことが大きく、女性が自分の身体に対して自己決定ができたり、自分の健康を守る方法を取ることを誰にも邪魔されないことになりました。
しかしながら、「リプロダクティブヘルス&ライツ」には、やはり妊娠出産が中心的な案件として関係しています。ただし、妊娠出産だけが女性の健康ではないことを考えると、性的な話全般に関する健康や権利の概念が必要になってきます。
そこで登場するのが「性の健康」と「性の権利」です。
そもそも性ってなんだろう?
性と言われて「性別」を連想する人は多いかもしれません。性別はその人の性の在り方を決めるもののひとつで、自分の性別から離れて生きられる人はいません。在り方を決めているものなのですから。ただ、性別だけがその人の性の在り方を決めているわけではないのです。
「身体の性(どういう性別の特徴を持った身体をしているか)」
「こころの性(自分をどういう性別だと認識しているか)」
「好きになる人の性(恋愛や性愛の対象になる人はどういう性別か)」
「振る舞いの性(どういう性別の人として行動するか)」など、
複数の要素がその人の性の在り方を決めています。
この複数の要素によって構成される(≒その人がどういう人かを表現する)性の在り方のことを「セクシュアリティ」と言います。
性(セクシュアリティ)というのはまさにその人自身の在り方、その人がどういう人であるかを表すものです。
性を科学する「性科学」という分野がある
科学は知識や知見を教えてくれます。人間の性を科学する「性科学」という学問も存在します。
性科学には例えば「性反応」という知見があり、それによれば、セックスは、興奮期→高原期→オーガズム期→消退期という4つの段階に分かれています。
女性の興奮は、個人差はあるものの、視覚や聴覚以上に接触刺激によって高まるとされています。そのため、十分な接触刺激によって濡れてからでないと挿入時に痛みが出る場合があるのです。
性交痛の原因は様々ですが、例えばこういうふうに、性科学によって今後ますます性交痛に関する知見も増えていくことがあるかもしれません。
性の三要素が教えてくれる情緒的なつながりの大事さ
人間の性には三つの要素があると言われています。要素というのはこの場合、側面や役割と言い換えてもいいでしょう。
「生殖性」
生殖をするための性という側面
「快楽性」
快楽を追求するための性という側面
「連帯性」
相手とのつながりを確かめることでやすらぎや安心感を得るという性の側面
これら3つが複合的に絡み合って、人間の性は成立していると考えられています。
生殖は人間の性の重要な側面のひとつですが、生殖だけが性の側面ではありません。
誰かとのつながりを確かめて安らぎや安心を得るというのも、人間の性においてはとても大事な側面なのです。
人間の性は豊かで懐が深い
どんな性の在り方も認めてくれるのが、人間の性の在り方です。
だから、「こんな性的な願望があることはいけないことなんじゃないか?」「性交痛がある自分はダメな存在なんじゃないか?」――そんなふうに思う必要は一切ないのです。
あなたがどうしたいかが重要であり、あなたがどういう人であるかを大事にしてくれる。
人間の性とは、本来そういうもの。豊かで懐が深いもの、としてとらえてください。
自分の性に自信を持って安心して暮らすための性の健康
こうしてみてくると、人間にとって性は身近な自分事であることと、性に関しては意外と様々な知見が確立されていることが分かります。ふあんふりーでは、こうした知識も伝えながら、性のトラブルを健康問題として考えていきたいと思っています。
この「性の健康とは?」の対談は以下のコラムでさらに詳しくお届けしています。