最終更新日 2024/8/19
今回は、コンドームに関して豊富な知識をお持ちのコンドームソムリエAiさんにお話を伺います。インタビューのテーマは「セックスの時に痛いのはコンドームが原因なの?」
コンドームソムリエAiさんの紹介
コンドームソムリエAiさん
国内約120種のコンドームを識るコンドームソムリエさんです。普段は養護教諭(保健室の先生)をなさっています。モットーは「コンドーム選びを前戯に!」コンドームを思いがけない妊娠や性感染症から身を守るプロテクターとしてだけでなく、カップルのセックスQOLを盛り上げるためのエフェクターとして捉える視点が斬新です。種類豊かなコンドームを触って嗅いで引っ張れる、実践的で参考になる学びの場「コンドーム試触会®︎」を立ち上げ、東京、大阪、福岡で開催しています。
Twitter https://twitter.com/Ai_con_j
セックスで痛いと、コンドームが原因ではないかと疑うカップルがいます。コンドームが原因?と思った時に、当然ながら生で試すのは無謀なことですよね。
私の場合は、相手からコンドームが原因かもしれないからと「腟外射精が得意だし、誰も妊娠させたことはないから、生でやってみよう」と毎回言われ続けた経験があります。何度も男性から言われると、自分に「痛い」という負い目がある分、断りづらいから困ってしまいます。
私もTwitterで「コンドームが痛いから付けないことがある」というご相談をいただくことがありました。コンドームを付けないセックスでリスクになるのは、ご存知のとおり妊娠と性感染症への感染です。もちろんコンドームを付けていても感染するものもありますが。
Aiさんのところにもそういったご相談がくるのですね。やはりコンドームを付けないほうが痛みは軽減できると思いますか?
コンドームを使わないことで「妊娠するかも?」と不安を抱えながらのセックスは過緊張状態となりやすく、濡れにくくなるため、コンドームを使わなくても痛みが出てしまうこともあります。どうしても使いたくない場合は別ですが、個人的にはコンドームを使う方が安価で安心を得ることができるのでは?と考えています。
やはりそうですよね。精神的な不安や恐怖から痛みが出ることもあるというのは、以前「セックスが怖い(気持ち編)」という記事で書いたことがあります。
そうはいっても、女性側の心配をよそに、付けないことを提案する男性もいるような気がします。そんなときにはどうすればいいでしょうか?
付けない提案をされても困ることのないように、自分が気持ちいいコンドーム=「推しコン」を用意しておくと良いですよ。相手が付けない方が気持ちいいという理由で来るなら、「私はこれを付けた方が(生より)気持ちいいの」と切り返しましょう。コンドームを付けた方が、さらに避妊や性感染症リスクの低減と安心感が得られるのであれば、コンドームを付けて気持ちいい方を優先した方がお得ですよね。コンドームは装着する側が選ぶものと思われがちですが、受ける側も自分と相手を守るために使う必需品です。自分にとってなじみの推しコンをいくつか探しておきましょう。
「推しコン」はコンドームソムリエAiさんが作った言葉で、一押しコンドームのことを指します。個々人が自分の一押しコンドームを見つけて持ち歩き、それを使うって、ステキなことですね。
自分の一押しを用意して「付けたほうが気持ちいい」と言う!とっても素晴らしいです!
ちなみに、もしコンドームによる性交痛の悩みを持つご本人が、どうしてもコンドームを付けたくないという場合は、妊娠と性感染症のリスクをどう低減するか、代替案を考える必要があります。
コンドームをしないという選択はあり得ないと個人的には思うところですが、妊娠と性感染症の予防として、例えばどんな方法があるでしょうか?
まず現時点で妊娠を望んでいないのであれば、コンドーム以外にも、低容量ピルやIUS(子宮内避妊システム)など、コンドーム以外の方法で避妊を考える必要があります。
日本では使いやすい避妊法の種類が限られていますが、そのなかから自分に合ったものを選べるといいですね。
性感染症の予防についてはどうですか?
パートナーが変わったタイミングで、一緒に検査に行くのがオススメです。
いいですね!ふあんふりーでも性「セックスで痛みが生じる性感染症のまとめ」の記事で検査デートをオススメしています。
ラテックスアレルギー、いわゆるゴムアレルギーについて、「ラテックスアレルギー」という記事にまとめたことがあります。ラテックスアレルギーの人はラテックス(天然ゴム)以外の素材のコンドームを使用することになるかと思いますが、私はポリウレタン素材もIR素材も使った経験が無く、「ポリウレタンは伸縮性が少ない」「IRはモチモチして伸縮性がある」という程度しか知識がありません。
コンドームを直接自分の体に装着する男性と違って、女性がコンドームに触れるのは挿入の際のみ。そのため、女性は自分がラテックスアレルギーであることに気づかずにいることも多いようです。だからこそ、女性には「コンドームの素材」にこだわりを持って選んで欲しいと考えています。ラテックスアレルギーの方でも使えるコンドームはポリウレタンとイソプレンラバーの2種類です。
それぞれどんな特性があるのでしょうか?
たくさん種類があるとどれがその素材なのかわかりにくいと思いますが、実は簡単に見極めることができるんです。
そうなのですね。まずポリウレタンについて教えてください。
ポイントは「薄さ」です。国内で販売されているコンドームのうち、0.02mm以下の薄さのものは、ほぼポリウレタンでできています(※)。ポリウレタンはラテックスと比較するととても丈夫な素材なので、ラテックス製のコンドームよりも薄いコンドームを作ることができます。また、熱伝導性に優れているという特性のため、お互いの温かさを感じやすいというのも人気の理由です。一方で、素材の硬さが苦手という人もおり、ポリウレタン製コンドームは好き嫌いが分かれるコンドームでもあります。
(※)2020年8月現在 ラテックス製の0.02mmとして、ジャパンメディカル社「うすぴた0.02」が存在
薄くて、熱の伝導性がある。ただし硬さが苦手な人もいる。それがポリウレタン製のコンドームの特徴なのですね。分かりました。
イソプレンラバーはどうでしょうか?
もう一つの素材であるイソプレンラバーは、商品としては1種類しかない(SKYN/不二ラテックス)ので間違えることもありません。ラテックスのような嫌なゴム臭もなく、しなやかで肌馴染みが良いため、知る人ぞ知る、人気コンドームです。SKYNは0.06mmほどの厚さですが、わらび餅のようにムニムニとよく伸びるため、ラージサイズのパートナーでも巻き下ろしやすいです。先ほどのポリウレタンは伸縮性に欠ける素材であることとその薄さから、ラージサイズの方ではつけにくいのが難点です。もしもパートナーのサイズが太めの場合は無理して薄モノを使わず、SKYNを選んでみると良いでしょう。「もしかしてラテックスアレルギーかも?」と思った時には「0.02mm以下の薄いコンドーム」か、「SKYN」のどちらかを試してみてくださいね。
イソプレンラバー製のコンドームは一種類のみで、ゴム臭が無く肌馴染みがいい。そしてよく伸びる。こちらも、よくわかりました。
「ゴムアレルギーは無いけど、匂いがイヤ」「コンドームについているゼリーが何だか合わない」漠然と、「このコンドーム好きじゃない」といった感覚を持つ人が少なからずいるように思いますが、コンドームは同じ種類のもの、同じメーカーのものを毎回買ってしまい、色々な種類を試さないことも多いように感じます。
国内で市販されているコンドームってざっと100種類くらいあるのですが、そのうちの80%がラテックスでできています。コンビニやドラッグストアで並んでいるコンドームは全体の「ほんの一部」なのです。その中で自分に合うものを探そうとなると、困難を極めます。例えるなら、店内に4〜5着しか陳列されていないセレクトショップで、試着もせずに自分にピッタリの服を買うような状態なんです。服や化粧品を選ぶ楽しさがあるように、コンドームにももっとたくさんの選択肢があります。メーカーさん側も、いかに使用者が「付けたくなるか」にこだわって様々なコンドームを作っていますので、選ぶことの楽しさを皆さんにも知って欲しいなと思います。
「推しコン方程式」で理想のコンドームを発見
100種類というのは、かなりの数ですね。そこから自分にフィットするコンドームを見つけるのは難しそうです。
店舗では商品数が限られてしまうので、ネット等で見てみるのもオススメです。私が運営するWEBサイトでも様々なコンドームを紹介しています。ちなみに私は、実物を触って嗅いで引っ張れるコンドーム試触会を主催しているのですが、その中で皆さん一人一人が自分に合った推しコンを手っ取り早く見つけるための「推しコン方程式」をご紹介しています。ぜひ、推しコン探しの手がかりにしてみてくださいね。
コンドームソムリエAiさんが考案した推しコン方程式はこちら
推しコン=素材×サイズ×厚さ×形状×ゼリー
Aiさんが思う「コンドームを使っても痛くない方法」にはどんなものがありますか?
これは私の見解ですが、コンドームを使ったセックスにおける「痛み」には大きく分けて2種類の要因があると考えています。まずひとつ目の要因は、自分の身体と素材が合っていないことによる痛みが挙げられます。
Aiさんが思うひとつ目は「自分の身体と素材が合っていない痛み」なのですね。
そうです。どの素材が合うかは正直、個人差が大きいです。
例えば、ラテックス製のコンドームは引っ掛かりが起きやすく、それによる摩擦で痛みにつながることが多いようです。この場合は表面がツルツルのポリウレタン製のコンドームに替えることで摩擦が低減され、引っ掛かりにくく、痛みも出にくくなります。
逆に、普段薄めのコンドームを使っていて痛みを感じる場合は、ポリウレタンの硬さが痛みの原因になっているかもしれません。もっと柔らかい素材のラテックスやイソプレンラバーを試してみるか、先端に精液だまりのない「リアル形状」タイプを試してみると良いでしょう。
ラテックスの引っ掛かりによる摩擦やポリウレタンの硬さといった素材に由来するものが身体に合わずに痛みにつながるパターン、ですね。
その通りです。また、もう一つの痛みの原因はやはり「濡れ不足」です。序盤から濡れにくく挿入時に痛みを感じるタイプと、中盤以降乾きやすくなり、摩擦で痛みを感じるタイプの人がいます。どちらも潤滑ゼリーやゼリー多めのコンドームを使用すると痛みを回避することができます。
「濡れ不足」による痛みは性交時の痛みの中でも代表的なもののひとつですが、潤滑ゼリーのついたコンドームの使用や、潤滑ゼリーとコンドームの併用で解決できそうですね。
ただ、女性はパートナーに潤滑ゼリーを使ってみたいと言いにくいと感じている人もまだまだ多そうです。
潤滑ゼリーを使ってみたいけど、言い出しにくいと感じている人は、まずゼリー多めのコンドームを使ってみてください。そして是非、使用後に「今日はゼリー多めのコンドームだったからいつもよりも気持ち良かった!」と相手に伝えてみましょう。「ゼリーが多い方がいいセックスができた」という成功体験を共有することで、「次回は潤滑ゼリーを使ってみようよ」と自然に切り出すことができます。コンドームとゼリーを上手に仲間に加えて、二人のセックスQOLを爆上げしちゃいましょう。
様々なコンドームを触り、研究を重ね、コンドームに関する膨大な知識をお持ちのAiさんならではの貴重なお話でした。自分の体質に合うコンドームを選びも、一見大変そうに感じますが、Aiさん流方程式を活用すれば、簡単に探せることがわかりました。男女とわず、「コンドームが痛みの原因かも」と感じたときは、素材を変えるという行動に移せますね。Aiさんありがとうございました。
わたしは、「こばの性交痛ばなし」と題してnoteで性交痛のコラムを発信していますが、このnoteの中で一番読まれているのが「セックスで痛いのはコンドームが悪い?」という経験談です。多くの方がこのことで悩んでいるのではないかと思っています。そこで今回は、コンドームに詳しい、コンドームソムリエAiさんにお話をお聞きしたいと思います。