プロに教えてもらう、心理アプローチ Vol.3 初体験は早く済ませなきゃダメなの?

  • 性経験が遅い人はやばい?
  • 初体験は早く済ませておくもの?
  • 万が一彼ができたときに、処女だと迷惑かかる?

ふあんふりーではセックスする/しないはあなたの選択、とお伝えしています。しかし「早く済ませることが正解」という価値観を持った人たちに囲まれて生活をし、「あなたも早く済ませたら?」などと言われ続けていると、「自分はまだいいと思っているんだけど…」という気持ちを表現したり、その気持ちに従って行動することに引け目を感じたりするものですね。
そこで、こういう状況で本当に望む「自分の選択」がどうやったらできるのか、臨床心理士・公認心理師の西田さんに相談してみました。

処女のままじゃダメなの?

初体験が若い年代のMUSTの「通過点」のように語られ、性経験をする/しないの自己決定を難しくさせている社会だなと感じます。処女であることに引け目を感じたり、性経験のない自分に自信がもてない、なんて話も耳にします。

西田

そうですね。早乙女先生もおっしゃっていますが、性の健康とは「自分の身体に対して自己決定ができること」「自分の健康を守る方法を誰にも邪魔されないこと」ですよね。“性行為をするのかしないのか”“いつするのか”という自己決定はみんなちがっていいんです。

でも性経験がない=”処女であること”の劣等感が強くなると、”自分がどうしたいのか”よりも“社会に合わせてこうすべきだ”という思いが上回って、自分にとっての性の健康はないがしろにされてしまうことも十分にあると思います。

社会やまわりからの圧力で揺らぐ自分の気持ち

気づかないうちに社会の圧力に流されてしまうのですね、ただ焦りがでると気持ちが混乱してしまうのは無理ないと思います。特に身近な友人や好きな人などからの圧力が重なると厳しいですよね。

そうなんです。こちらが「焦らないで。自分を大事にしてね」と伝えても、当事者はそんな言葉を聞きたいわけではないのかもしれないと思うときもあります。その言葉で納得できるならきっとここまで悩まないでしょうし。

そういう場合はどうすればいいでしょうか?

一見遠回りに感じるかもしれませんが、“処女でなくなる”ことの先にどんな未来を想像しているのかを考えてみると、自分が望んでいるものの輪郭が見えてくるかもしれません。例えば「成熟した大人になった自分」なのか、「友人たちとの会話に引け目なくついていける自分」なのか、「堂々と恋愛にチャレンジしていける自分」なのか・・・人それぞれ目指す姿はちがいますよね。

“処女でなくなる”ことはあくまでも手段であって目的ではないはずです。目指す姿に近づくために、“処女でなくなる”こと以外にはどんな手段があるのか考えてみてもいいかもしれません。例えば「成熟した大人」を目指すのであれば、仕事で認められる、趣味を極める、新しいことに挑戦する、といった手段もあります。目指す姿への自分だけのたどり着き方があると思います。

それを探すのはけっこう大変そうですね。

そうですね。ちなみに、目指す姿を追い求めることだけがすべてではありません。「このままで私は私!セックスはまだいい!」と今の自分をそのまま受け入れることだって、立派な自分らしい答えです。今の自分をそのまま受け入れることはとても勇気のいることなので、それができる自分を誇らしく思っていいと思いますよ!

自分らしい性のあり方を探すには

性経験がないままの期間が長くなると、どのタイミングで性行為をすればいいのかわからなくなる人もいるようなんですが、どうすればいいでしょうか?

初めてでもそうでなくても、誰かと性行為をするときは次の3つを意識してください。

  1. 性行為をしたい気持ちがあること
  2. 性行為をしたいと思う相手がいること
  3. 避妊や感染症予防など、身体を守るための性の知識があること

この3つがそろったときに初めて、”自分らしい性行為をする準備ができた”と言えると思いますし、1つでも足りていない場合はまだそのタイミングではないのかも。まずはその足りていないピースを埋めることから考えてみてほしいです。

劣等感に悩むときこそ、コンプレックス商法に注意!

処女であることに劣等感を抱く人の中には、処女でなくなるために性行為をする相手をSNSで探すという話も耳にするので悩みの切実さを感じます。

今はいろんな出会い方がありますし、そういう選択肢もあっていいと思います。ただ、性行為を行う限り妊娠や感染症のリスクは避けられませんし、あまり知らない人が相手だとそのリスクは大きくなります。最近は、「処女のままでいいの?」「妊娠の心配は100%ありません」といった宣伝文句で、処女コンプレックスを刺激して性行為の相手を引き受ける “処女卒業サポート”というものもあるそうです。強い劣等感があればあるほど、自分にはもうこの方法しかないと考える人がいるかもしれません。世の中のどんなサービスもそうですが、それを利用することで満足して幸福になる人と、利用しても満たされず「やっぱり何か違う…」という想いを抱く人がいるものです。この記事を読んで、「自分はどちらかな」「自分にとっての性の健康ってどういうものかな」と、自分だけの性のあり方をもう一度考えていただけたらと思います。

個人によって、セックスをするのかしないのかの自己決定は違っていいものです。しかし、「多様でいい」「選択肢は色々」という認識が十分に浸透していない場面も多くあります。性について自分らしい選択ができてないと感じた時に、立ち止まって考えてみようと思います。それから西田さんのようなカウンセラーの力を借りてもいいのだということも頭の片隅で覚えておきたいと思います。

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ふあんふりー編集部
ふあんふりー編集部FuanFree
WHOなどの国際機関が定める「性の健康」の概念に着目し、私たちの編集部は「痛みのない、喜びのある性生活のためにー」をモットーに掲げています。総医療監修の医師をはじめ各方面の専門家との協力を通じて、性交痛に関する信頼性の高い情報を提供しています。私たちは性の健康に対する理解を深め、読者が充実した性生活を享受できるよう、包括的で専門的なコンテンツをお届けしています。