「歳だから仕方がない…」「婦人科で相談するのが恥ずかしい…」そんな風に痛みを抱えたままになりやすい、更年期以降の性交痛。「また痛むかも…」と考えると性欲がどんどん落ちてしまうこともあるでしょう。
更年期以降に起きる性交痛は、主に女性ホルモン「エストロゲン」の分泌が低下し、腟が乾燥や萎縮することで起こります。女性ホルモンと性器の潤いで詳しく解説しています。この場合は、一般の婦人科で、ホルモン補充療法や、腟内に使用するホルモン剤による治療が可能です。また乳がんや婦人科系疾患の既往歴が腟の乾燥や萎縮につながることもあります。これらの既往のある方はホルモン剤が使えないものの、そのような時にも自費診療になりますが治療法があります。今回ドクター訪問期Vol.5に登場した婦人科形成のなおえビューティークリニック・喜田直江先生にどんな自費診療の治療があるのか、ドクター訪問記Vol.5 番外編としてお届けします。
目次
お話を伺った先生
婦人科形成とは
「婦人科形成」「美容婦人科」といったりしますが、保険適用では対応しきれない婦人科系の悩みに対応しています。保険の適用外のため病気ではなく美容の範疇と思われてしまうこともありますが、私は顔の美容とは違うと思っています。例えば、婦人科での保険適用内での治療では、性交痛の人へのホルモン錠剤の処方はできますが、それ以上のことができません。
萎縮の性交痛の治療方法
診察方法
まず患者さんのお話を聞きます。お話を聞くと色々分かってきます。その後診察して腟壁の萎縮の進行具合や、どのくらい広がるのかなどを診ます。そのうえでその人の状態に合わせた治療を考えていきます。
なお、器具は使わず、ジェルなどを使いながら指で診ていきます。
治療法
炭酸ガスレーザー
腟の乾燥や萎縮で性交痛に悩む方には、ダウンタイムが少なく、痛みも少ない、フェムタッチという最新の炭酸ガスレーザーで治療を行なっています。
骨盤底筋をトレーニングする機器
尿もれや筋力の低下の治療には、エムセラという筋肉をトレーニングする機械を導入しています。1回30分座っていただく椅子なんですけど、全身ポカポカになるんです。骨盤周りの血行がすごく良くなるので萎縮のレーザー治療とセットで使っていただくとかなりの効果が期待できます。萎縮は血流の低下なので。
痛みが残る部分にヒアルロン酸の注射
ヒアルロン酸です。ヒアルロン酸はほぼ水分のかたまりなんですが、それを萎縮で硬くなった部分にダイレクトに注射していきます。性交痛や萎縮の方は、腟の奥のほうはレーザーですぐ良くなりますが、入口のところは痛みがしつこく残ったりするので、入口に注射も一緒にすることが結構あります。注射だと入れた瞬間から柔らかくふかふかになるので、効果もすぐ出ます。注射は奥までは届かず入口部分だけの使用になるため、レーザーと併せて治療したりします。
治療効果の目安
軽度の萎縮や閉経して間もない方の萎縮ですと1ヶ月くらい。ただ30代頃から性交渉をしていなくて閉経を迎え更に10年くらい経過している場合は、半年ぐらいかけて良くなっていく感じです。
レーザー治療の効果は、人によっては4ヶ月の方もいるし、半年や1年の方もいます。メンテナンスによってはかなり(治療後の状態を)持続できる方もいらっしゃいます。この治療はホルモン補充できない人にもできるので、お薬を使えない人には治療の選択肢のひとつにしていただけます。
エストロゲンの腟剤とレーザー治療の違い
当院も局所的にエストロゲンのクリームは使用しています。とても良いのですが、錠剤に関しては腟萎縮の場合、腟が乾いていて錠剤が溶けないことがあります。その場合、塊のまま膣の中でずっと残ってしまいます。なので腟剤はある程度のうるおいがないとダメで、なかなか効果が出づらいです。
また、ホルモン剤を使いたくない方、治療でホルモン量をできるだけで抑えたいと希望する方もいらっしゃいます。
乳がんの既往がある方はホルモンが使えないので、そういう方にはホルモン以外の治療方法として、レーザーや注射といった選択が大事になります。
完治までの通院回数の目安
高い頻度での通院が難しい遠方の方が治療したい場合、その人の状態によって違いますが、通院は月に1回ですので遠くから通われている方もいらっしゃいます。
例えば入口を広げる必要がある方は、治療に入る前に広げる治療を1ヶ月することになります。レーザーの器具は太さがあるので、ある程度広がらないと治療がスタートできないのです。半年の治療であれば通うのは5回か6回という感じです。
更年期であれば、治療をしていくうちにどんどん良くなっていくので、終わりというのはないのですが、ただ治療で良くなったと実感できるのは2ヶ月くらい経過してからです。3〜4ヶ月で性交渉できるようになります。症状が進行している方だと半年くらいは必要です。
先生から更年期から性交痛で悩む方たちへメッセージ
更年期の方が性交痛の相談に来られるとき、最初に「この歳になって恥ずかしいんですけど」とおっしゃるんですね。こちらからしたら全然恥ずかしいことではないです。年齢も関係ないし、恥ずかしいことでもない。周りに非難されることでもありません。でも、婦人科の男性医師に性交痛の相談をしたら「その歳なんだから、もういいでしょ」と言われたという話を前に聞いたことがあります。「そうじゃないでしょ!」って思うんです。婦人科の先生みんながみんなそうではないけれど、まだまだそういう先生はいらっしゃいます。こういうことが相談しづらい環境を作っていますよね。気軽に治療の相談にいらしてください。
取材と編集を終えて
性交痛は更年期にでやすいメジャーな症状のひとつなのに、直江先生がおっしゃるように、年齢を意識して気軽に相談しづらい、また相談しても心ない言葉を受けたなどつらい経験をされた方も読者の中にはいらっしゃるかと思います。
更年期障害のひとつにあげられる性交痛は、治療の選択肢が広がり、親身に診てくれるクリニックも増え、治療の理解も徐々に進んできていると感じています。自分にあった治療を考えるときに、今回のお話を参考にしてみてください。ふあんふりーも直江先生と同じ気持ちで、どの年代の性交痛も恥ずかしいことではない、と更年期以降の世代の治療を応援し、社会にお伝えしていこうと思います。
直江先生、お忙しいなか取材にお答えいただき本当にありがとうございました。なおえビューティークリニックの来院をご希望の方は、ホームページで予約方法をご確認ください。
なおえビューティークリニック院長
喜田直江先生
(東京都中央区)
産婦人科医として多数の分娩・手術症例を経験後、形成外科医として技術を習得したのち、さらに美容外科・美容皮膚科全般を習得。現在は婦人科系の形成医療を中心に保険診療では解決できない婦人科系のお悩みの解決をおこなう。
【略歴】
平成13年 京都府立医科大学卒業後、産婦人科医として多数の分娩・手術症例を経験。
平成15年 形成外科医として、形成外科の基本から縫合の技術まで幅広く習得。
平成18年 大手美容外科にて美容外科・美容皮膚科全般を習得。
とくに婦人科系の美容手術は、日本でも有数の症例数を誇る。
平成23年10月 東京銀座でなおえビューティークリニックを開院。
【所属学会】
・日本形成外科学会会員
・日本性科学会会員
・日本抗加齢医学会会員
・ビビーブ認定医
写真提供:なおえビューティークリニック