萎縮性腟炎による性交痛や出血、外陰部のかゆみや痛みの原因と対処法

「更年期の性交痛」について何度か取り上げてきましたが、更年期における外陰部の不調が性生活に影響を及ぼすことは少なくありません。更年期のさまざまな症状が顕著に現れる時期に、性器周辺のトラブルは、本当につらいものです。

そのような不調を感じた際の婦人科での相談や、この時期に現れる性交痛についてなど、あゆみレディースクリニック高田馬場の佐藤歩美院長にお聞きしました。クリニックでの取り組みや受診時の工夫などについてもお話ししてくださいました。ドクター訪問記Vol.6の番外編としてお送りします。

お話を伺った先生

あゆみレディースクリニック高田馬場 院長
佐藤歩美先生
(東京都新宿区)

女性の皆さんには、ぜひ産婦人科かかりつけを作っていただきたいと思っています。産婦人科の受診は敷居が高いと感じることもあるかもしれませんが、私たちのクリニックは、気軽さと快適さを大切にしています。場所もアクセスしやすく、アットホームな雰囲気で、一人一人に合った診療を提供しています。皆さんが気軽に受診していただけるクリニックを目指しています。

【略歴】
横浜市立大学医学部 卒業
NTT東日本関東病院 勤務
総合母子保健センター 愛育病院 勤務
ベビースマイルレディースクリニック有明 副院長などを経て 現在に至る。

【資格・所属学会】

・日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
・日本周産期・新生児医学会 周産期(母体・胎児)専門医
・女性医学学会 女性ヘルスケア専門医
・日本性感染症学会 認定医
・日本抗加齢医学会 認定医
・日本医師会 認定産業医

写真提供:あゆみレディースクリニック高田馬場

性交痛と腟・外陰部不調の原因

閉経が近づくと、女性ホルモンの減少により腟の粘膜が薄くなり、柔軟性が低下し、腟の分泌物も減少します。その結果、腟や外陰部が乾燥しやすくなります。また、腟内の健康を維持するための酸性寄りのpH値もアルカリ性に傾き始め、それによって腟炎などが起こりやすくなります。個人差がありますが、からだの変化として起こりやすい症状の一つです。

詳しいメカニズムについては、「女性ホルモンと潤い」の項目で詳しく解説しています。参考にしてください。

外陰部のかゆみ・痛み:皮膚科か婦人科?

外陰部の不調がある場合、婦人科と皮膚科どちらに行くべきかを迷う方は多いです。一般的な皮膚科ではフラットなベッドが使用されていることが多く、診察できなくはないもののデリケートゾーンまで診察できる姿勢がとれる環境は整っていないことが多いようです。先に婦人科を受診し、「皮膚科に相談するほうがいい」と判断された場合に皮膚科を受診するという順番が良いでしょう。

 外陰部の臭い:治療とビデ使用の注意点

外陰部の臭いが心配な方は、おりものの検査やクラミジアの検査を受けてください。特に性交渉の経験のある方は性感染症の可能性を考慮する必要があります。検査結果によっては細菌性腟症と呼ばれる状態が生じていることもあります。この状態では、腟の免疫力が低下し、腟内の自浄作用が減少します。必要に応じて腟にお薬を使用することもありますが、一部の方々には乳酸桿菌のサプリメントが有効な選択肢となっています。これらのサプリメントは、腟内の環境を整え、健康なバランスを保つための乳酸桿菌を補給する助けとなることが期待されています。

市販のビデ

市販のビデを使用しても問題ありませんが、過剰使用には注意が必要です。洗いすぎにより腟内の健康を保つための菌が先に洗い流れてしまう例もあります。そのような場合、本来なら一番検出されるべき乳酸菌が少なくなっていることがあります。生理の終わりかけにダラダラと続く不快感がある場合、不快感がある場合などに行う洗浄は問題ありません。腟内洗浄は、匂いを止める効果があり便利ですが、毎日~週3回以上使用するのは多いと思われます。

腟錠の処方

においが気になる場合はフラジールという腟錠があります。抗生剤は腟内の常在菌も一緒に殺菌してしまうため、病原となる菌を静めて健康の回復をサポートする静菌作用のある薬です。腟錠の使用が終わって少しするとまた同様の症状が出てくるなど、繰り返す場合は、サプリを併用して根本的な原因にアタックするという選択肢もあります。

抗菌薬の使用後は注意

腟カンジタを繰り返すのもこれと同じ原理です。カンジダ菌はお尻の周辺にも存在するため、排尿後にティッシュで拭く際に無意識に後ろから前に拭いてしまうことがあります。これは感染を起こしやすくする行為です。必ず前から後ろに拭くようにしてください。また、抗菌薬の使用後は、腟内の健康を保つために重要な乳酸桿菌が減少しやすくなるため、注意が必要です。「膀胱炎になり、病院で抗菌薬をもらいました。その後、かゆみやおりものの増加があります」といった症状が起きることもあります。

※カンジダ菌:皮膚、口、腸、腟などに存在する常在菌、免疫力の低下で増殖することがあります。

外陰部のかゆみ:対処法とかゆみ止め

閉経前後になると性器周辺の乾燥が起こりやすくなります。皮膚や粘膜の乾燥によって痛みを感じることもあります。本当にひどい場合、湿り気のある粘膜と皮膚の境目のあたりが浅く裂傷していることがあります。また、切れていなくても、その一帯が赤くかぶれたり、湿疹ができたりしてヒリヒリする場合もあります。こういう場合は一時的に弱いステロイドなどの外用剤を使用することもあります。一度治療を行った後は、再発を防ぐために保湿ケアが重要になります。治療後に保湿ケアを怠ると同じ状態が繰り返される可能性もあります。

フェミニーナ軟膏で外陰部のかゆみを和らげる方もいますが、乾燥による痒みには効果が限られる場合もあります。そのようなときは診察をお勧めします。

デリケートゾーン用ソープの必要性

デリケートゾーン用のソープは、刺激が少なくpH値が調整されています。使用して健康に影響が出る心配は少ないようです。ただし、お湯だけで洗浄するだけでも問題はありません。

ワセリンによる保湿

ワセリンは保護膜を張ってくれるものです。使用は問題ありませんが、湿度を与えてくれるものではありません。「油っぽく下着が汚れるから嫌」という方もいます。そういう方はデリケートゾーン専用の保湿剤の方が使いやすい場合があります。

婦人科診療について

婦人科で性の相談をしづらいという方もいるかもしれませんね。当院にかかっている患者さんの様子などをご紹介します。

相談しづらいときの対処法

婦人科受診の際、性器の悩みを話しづらいという方も多いと思います。

当院では、予約時にウェブ問診を極力使って書いてもらっています。その問診票に事前に口に出しづらい相談を書いてくれている方もいます。問診票には書いていないものの、「本当は気になっているのに言い出せない」と最後の最後に言う方もいらっしゃいます。だから必ず「他に気になることないですか」と声をかけるようにしています。その場合、内診の前に聞いておきたかったという内容もあります。性のことも気にせず最初にお話ししていただければと思います。最後だと、「内診もしちゃった後だからもういい」とご本人もなってしまうので。

口頭で伝えることが憚られる気持ちもよく分かります。診察をする医師としては、診察を始める前にそういった情報も知っておくことで、より的確な診察ができるものです。言いづらい気持ちはとてもよく分かる一方、伝えておくことのメリットは大きいということも側面もあります。

閉経後の婦人科診療と検診

「閉経後は婦人科は行かなくてもいい」と考える方もいますが、60代までは婦人科検診に積極的に行くほうがいいです。子宮体癌は60代や70代でも発生します。卵巣癌も発症することがあります。子宮頸がんは減少するものの閉経後もリスクはあります。70代までは2年に1回はがん検診を受けておくほうがいいでしょう。また、不正出血があった場合の受診も重要です。

地方居住者の通院

当院ではオンライン診療を導入しています。しかしながら、婦人科の初診はまず内診を行いたいという考えが一般的です。そのため、オンラインと通院を組み合わせて受診するケースもあります。

例えば更年期のホルモン補充療法では、安定するまでお薬の調整や変更が必要な場合があります。最初の段階では月に1回程度の頻度で来院し、安定してきた後は3ヶ月に1回の来院をするという形で診療している事例もあります。地方在住の方や海外在住の日本人の方もそれに合わせてスケジュールを組んで来院されているようです。

更年期からの性交痛

更年期世代の性交痛の相談はよくあります。診察の中で明確に相談する方や、その話題については深堀りしないという考えの方もいます。性行為はコミュニケーションの一環であり血行も良くなります。痛みを改善させることでより快適になる可能性があります。相談したいという気持ちがある時には、ためらわず相談してください。

セカンドバージン:性行為再開前の婦人科受診

更年期世代の方の中には、「子どもも巣立って、セックスを再開してもいいかな」と考えつつも、10年単位のブランクがあることで不安を感じる方もいらっしゃいます。心配なことがあれば相談することも大事です。ただ、実際にしてみると「何ともなかった」という方が多く、心配せずにチャレンジしてみてもいいのかもしれません。不安な場合は潤滑剤を用意しておくことも1つの方法です。長い間性交をしていなかったから必ず痛みを感じるというものではありません。j

編集部より一言メモ

潤いが足りない場合に使う潤滑剤は選び方にコツがあります:「潤滑剤の選び方」をご参考に。

性行為後の出血と受診必要性

明らかにピリッと切れた感じがあり、赤い血が出てすぐに止まるようなら、心配はありません。しかし、少量でも出血がダラダラと続く場合は、婦人科の診察を受けたほうがいいです。性交後に出血がある場合は、子宮体がんや子宮頸がんの可能性が考えられます。

性交痛ホルモン腟錠の効果

女性ホルモンの一つであるエストリオール(E3)の腟錠(エストリール腟錠など)を処方することがあります。縮性腟炎による腟内の乾燥は適切な治療によって改善することができます。ただし、漫然と薬を使用すると、薬を使わなくなった後に再発しやすくなります。ホルモン剤は基本的に局所的な作用であり、力価も比較的弱いとされています。子宮体がんのリスクはそれほど高くはありませんが、心配なことも理解できます。例えば症状がひどい場合に最初の1週間は毎日使用し、その後は徐々に減らしていくなどの工夫をします。また、症状が気になる時に3日程度連続して使用するなど、その人に合わせた方法を提案します。

また、エストリオール(E3)の腟錠は、腟萎縮があっても普段の生活に支障がない場合は、性交痛対策のために単発的に使用することも有効です。即効性はないため性行為の数日前から使用する必要があります(性行為のタイミングを予測するという別の難しさがあります)。

保険適用外の性交痛の治療

腟内照射をする機械は大きく分けて①炭酸ガスレーザー、②ハイフ、③高周波の3種類があります。②のハイフは比較的若い世代の方で膣を引き締めたいと考える方に向いています。一方、年齢を重ねて女性ホルモンが低下した後に起こるさまざまなトラブルに対しては、①のレーザー治療は炭酸ガスレーザーを使用した【モナリザタッチ】と呼ばれる治療機器が有名です。当クリニックでは③に該当するウルトラフェミーという高周波の機械を使用した治療を行っています。

女性ホルモンの低下とともに、腟の粘膜が痩せて乾燥し、痛みを感じることがあります。また乾燥や痛みとともに、灼熱感や萎縮性腟炎、ヒリヒリなどが起こることがあります。こうした場合、ウルトラフェミーの治療が有益です。ウルトラフェミーは高周波を用いて、粘膜の下にある皮下脂肪の部分に熱を加え、古くなったコラーゲンをわざと壊すことで、再生を促進します。具体的な方法は、経腟の超音波と同じ感じで行います。

他には、エムセラという服を着たまま座る、強力な筋収縮を引き起こし、骨盤底筋を強化し、尿もれを改善する治療器があります。骨盤内の血流が改善されることから、萎縮性腟炎の効果にも期待が寄せられています。

エムセラによる治療を体験!

歩美先生のご好意で編集長のこばやしがエムセラを体験させていただきました。

「不規則な振動が骨盤底の筋肉にうねるように伝わり、ズンズンと実感できました。トレーニンググッズや指の挿入、骨盤底筋への力の入れ方に苦戦する必要がなく、着衣のまま座るだけで行える点が、心理的負担が軽減される治療法として、FuanFree的には注目すべきと感じました。」(こばやしの感想)。

エムセラを設定している歩美先生(左)と、エムセラ体験中の編集長こばやし(右)。

取材と編集を終えて

年齢を気にして相談しづらい更年期以降の性交痛や性器の悩みについては、一般の産婦人科で保険適用の治療が受けられます。さらに、クリニックでも理解と治療の取り組みが進んでいます。ただし、地域によってはクリニックの数や治療の選択肢が限られている場合もあります。そのため、都心にあるクリニックをうまく利用することで、治療を受ける機会が作れたらいいなと思い、山手線高田馬場の駅前にあるクリニックの院長歩美先生にご協力をいただき、ご紹介させていただきました。

歩美先生、お忙しいなか取材にお答えいただき本当にありがとうございました。あゆみレディースクリニック高田馬場の来院をご希望の方は、ホームページで予約方法をご確認ください。

FuanFreeではみなさまのお悩みを募集しております。投稿フォームからご質問お待ちしております。さまざまな視点を持つ専門家と考え、皆さんのより良い生活のためにお答えします。

医療監修:産婦人科医 佐藤歩美

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ふあんふりー編集部
ふあんふりー編集部FuanFree
WHOなどの国際機関が定める「性の健康」の概念に着目し、私たちの編集部は「痛みのない、喜びのある性生活のためにー」をモットーに掲げています。総医療監修の医師をはじめ各方面の専門家との協力を通じて、性交痛に関する信頼性の高い情報を提供しています。私たちは性の健康に対する理解を深め、読者が充実した性生活を享受できるよう、包括的で専門的なコンテンツをお届けしています。