更年期になると、ホットフラッシュだけでなく、性交痛も多くの女性が経験する一般的な症状です。ふあんふりーが取材した医師たちは、更年期の性交痛は治療できるものであり、診察を受けることをおすすめしています。しかし、この悩みはパートナーや身近な人、さらには医療機関でも相談しづらいことが多いかもしれません。
本記事では、更年期以降に性交痛が起こる主な原因から治療法、そしてふあんふりーならではのグッズを活用した5つの対策について、これまで公開してきた医師や専門家に取材した関連記事のリンクとともにわかりやすくご紹介します。皆さんのお悩み解決に役立つ情報となれば嬉しいです。
目次
なぜ更年期に性交痛がおきやすいのか
エストロゲンは、女性の健康を支える大切な女性ホルモン。エストロゲンは、お肌や粘膜の潤いと弾力を保つ役割を果たしています。閉経が近づくあたりから、エストロゲンの分泌が減少し、腟の粘膜が乾燥しやすくなり、薄くなってしまいます。この変化により、性的な興奮があっても潤いが足りず、挿入時に痛みを感じることがあります。 また、エストロゲンが減ることで腟のpHバランスがアルカリ性に傾きやすくなり、感染症のリスクも高まります。これらの要因が重なり合って、更年期には性交痛が生じやすくなります。
更年期におきる性交痛の治療法
一般の婦人科(保険診療)
更年期からエストロゲンが減少し、性器が乾燥する性交痛には、一般の婦人科でホルモン補充療法(HRT)やエストロゲンの腟剤・外用薬を処方してもらえます。医師から個々の状態に応じて治療法を提案されます。これらの治療は保険適用で受けられるため、検査を兼ねて自分の状態を知る意味でもまずは婦人科受診がおすすめです。
「性交痛を相談しづらいときは問診票に書くとこちらから質問します」と問診票の活用を教えてくれた、あゆみレディースクリニック高田馬場の佐藤歩美先生。更年期の性交痛の診療について、以下の記事で解説しています。
自費でおこなう診療
自費診療では、レーザー、高周波、超音波、電磁波などの治療や、腟壁に弾力や潤いを与える注射や薬剤を使った治療などが受けられます。乳がんの既往歴などでホルモン補充療法が使えない方にも対応した治療も行われています。
クリニックごとに治療方法が異なるため、詳細は受診したいクリニックに直接お問い合わせください。治療に関するカウンセリングも行っているクリニックが多いので、まずはカウンセリングを受けてみるのも良いでしょう。
自費診療で行える幅広い治療について、なおえビューティークリニックの喜田直江先生が以下の記事で解説しています。
こころのケア
更年期は身体だけでなく、心にも変化が生じやすい時期です。うつ症状が現れることもあり、「なぜか気分が落ち込む」「セックスどころではない」という思いから、性的に興奮しにくくなることがあります。これが原因で性交痛を感じることもあるようです。 また、セックスが思うようにできないと自信を失い、気分が落ち込む時期と重なって、気づかないうちに元気を失ってしまうこともあります。このような場合、早めに心理カウンセリングを利用して、心のケアを受けることを検討してみてください。心理カウンセリングで心のケアをすることで、心の健康を保ち、元気を取り戻す手助けとなります。
しかし、多くの方が心理カウンセリングの経験がないかと思います。以下の記事では、公認心理師の潮英子さんが、精神科、心療内科、心理カウンセリングの違いや、カウンセリングの受け方について解説しています。
婦人科系の病気が原因で痛むことも
更年期は、子宮体がんなどの婦人科系の疾患にもかかりやすい時期です。婦人科系の病気の中には、性交時に痛みや出血などがある場合があります。定期的な婦人科検診をされていない方は、とくに早めに婦人科の受診をおすすめします。
グッズを活用した5つの対策
対策1 適切な潤滑剤選びと使うタイミング
エストロゲンの低下により、濡れにくくなり、腟壁も薄くなるという摩擦に弱い状況では、潤滑剤選びが重要です。粘度が高いとよく滑ると考えられがちですが、糸が引くほど粘度が高い製品の多くは乾燥しやすい傾向がありますので、注意が必要です。水溶性ベース、もしくは持続性の高いシリコンがブレンドされた混合タイプの潤滑剤を選び、粘度がゆるく、よく滑り、乾きにくいものを選ぶことがポイントです。
水溶性+シリコンで滑りと持続性に優れた
潤滑剤とラブローションの違い、種類や使用時の注意点を以下の記事で解説しています。
性行為の後にヒリヒリ感が残る場合、途中から潤滑剤を追加する方法もあります。ラブライフアドバイザーのOliviAさんが、以下の記事で詳しく解説しています。
対策2 ダイレーターで徐々に慣らして、不安も解消
複数のサイズがセットになったダイレーターを使い、最初は小指ほどの細いサイズから、徐々に慣らしていく方法があります。ゆっくりサイズアップすることで気持ちにも余裕がうまれます。セルフプレジャーでもよいとされています。適度な刺激は腟の弾力性を維持し、何年もの間、性交渉をしていなかった場合にも、役立ちます。
「20年振りに性交渉で激痛と出血、萎縮性腟炎ですか?(50代・女性)」という質問に産婦人科医でセックスセラピストの早乙女智子先生が詳しく改善方法を解説しています。
すぐ使える、ジェルとポーチ付
対策3 接触が柔らかい、潤いたっぶりのコンドーム選び
潤滑ゼリーがたっぷり含まれているコンドームや、肌あたりが柔らかなIR(イソプレンラバー)素材を使用したコンドームなど、心地よく使える商品がネットや大型ドラッグストアで販売されています。ぜひ、自分に合ったものを選んでみてください。
柔らかな素材のコンドーム
対策4 素手にはないスムーズ、指カバー
指カバーのスムーズな感触は、乾燥で敏感になっている腟や外陰部への刺激を最小限に抑えるのにも役立ちます。また、雑菌に弱く炎症を起こしやすいときは衛生的に保つのにも有効です。
直接触れない安心感がいい
対策5 挿入なしでもお互いが楽しい!グッズの活用
同世代の男性パートナーであれば、性機能の変化や問題が生じることがあります。お互いを挿入や射精から解放して、ラブグッズなどを活用することで、より楽しい性生活になることもあります。様々な方法で楽しむことを、開放的な気持ちで試してみてください。
挿入が負担で諦めていた性生活にあてるだけのグッズ。プレジャー体験の練習や、パートナーと一緒にあてる、間に挟むなど、挿入を避けながらも、振動で楽しむことができるpom。
女性が開発した静音でやさしい形状
病気や閉経などで、からだに変化があった場合、挿入なしでもお互いが楽しめる性生活にシフトするという選択肢もあります。しかし、自分たちだけで考えるには限界があるかもしれません。そこで、性のテクニックに関する書籍を執筆している女性の専門家にヒントやアイディアを伺い、ご紹介しています。
まとめ
- 閉経前後に起きる性交痛の主な原因は、エストロゲンの減少によるものである
- 婦人科疾患が原因であることもありますので、まずは一般の婦人科を受診をする
- 治療には保険診療と自費診療があり、自分に合ったものを選ぶことができる
- 潤滑剤は、粘度が低く、潤滑性と持続性に優れたものを選ぶ
- 摩擦を減らし滑らせるために、指カバーを活用
- コンドームは柔らかい素材で、潤滑剤が多めのものに切り替えてみる
- 萎縮やブランクの空いた性生活の再開には、ダイレーターを使って慣らしていくのも良い
おわりに
更年期の性交痛についての知識を持つことで、適切な対策を講じ、快適な生活を維持する手助けとなります。ただセックスをすることは、熟年のカップル間でも義務ではありません。「もうセックスを望まない」とふたりで意見が一致しているのであれば、性生活を終わりにしても、仲良く過ごすことができるのではないでしょうか。性生活を続けるには、どのような対策が自分に適しているか、ゆっくり検討してみてください。
執筆・監修:メノポーズカウンセラー 小林ひろみ