腟ダイレーターの使い方を産婦人科医が解説、入らない悩みのセルフトレーニングのポイント

ドクター訪問記Vol.3に登場した、咲江レディスクリニックの院長、丹羽咲江先生。実は取材の中で、ダイレーターに関する話題が頻繫に登場しました。ドクター訪問記Vol.3では、文字数の関係でその部分を掲載できませんでした。

ふあんふりーにもダイレーターでセルフトレーニングをしたい/しているけど正しいかわからない、とお悩みの声が届いています。腟が狭い、処女膜が伸びにくい、挿入に慣れる、処女膜切開手術後やレーザー治療後のケアのためにも、ダイレーターを使ったセルフトレーニングがとても役に立つと先生は取材の中でおっしゃっていました。また、使い勝手のいいオリジナルのダイレーターも開発されたそうです。そのお話も混ぜながら、今回は掲載しきれなかった話題を番外編セルフトレーニング特集として、ご紹介します。

お話を伺った先生

丹羽咲江先生

咲江レディスクリニック 院長(愛知県名古屋市)

産婦人科医
モットーは「やさしさ」、「丁寧」、そして痛くない診療。診察に使う器具は特注品で、痛みを最大限に減らすというこだわり。日本性科学会認定セックスセラピストでもあり、セックス時の悩み(痛みなど)への治療やパートナーとのコミュニケーションの取り方のアドバイスも得意としている。他にも思春期の外来や、中学校・高校・大学で性教育、「女性の健康」について講演活動などにも力を入れる。

【略歴】
平成3年3月 名古屋市立大学医学部 卒業
平成3年5月 国立名古屋病院(現 国立病院機構名古屋医療センター) 勤務
平成8年4月 名古屋市立城北病院(現 名古屋市立大学部附属西部医療センター) 勤務
平成14年1月 咲江レディスクリニック 開院

日本産婦人科学会会員
日本思春期学会会員
日本性感染症学会会員
愛知県産婦人科医会経営委員
愛知県性教育協会会員
NPO:PROUD LIFE 監事
愛知・思春期研究会共同代表
日本性科学会 幹事
日本性科学会認定セックスセラピスト
一般社団法人パートナーシップ推進協会理事
避妊教育ネットワーク会員

写真提供:咲江レディスクリニック

セルフトレーニングしてもいいの?

基本的にセルフトレーニングを自分のペースで行うことは問題ありません。自宅でリラックスした状態で自分のペースでゆっくりできることが、セルフトレーニングのよいところです。ただしYouTubeのセルフトレーニングを解説する動画でも注意をしていますが、腟や外陰部に炎症のある状態でセルフトレーニングをしてしまうと、かえって炎症が悪化してしまうので炎症を治療した後にセルフトレーニングを行ってください。目安となるのは挿入時に痛みがあったりおりものが増えるという症状です。

ダイレーターの挿入の目安

通常のダイレーターだと挿入の深さがわかりにくく、どこまで挿入するべきか迷ってしまいます。先端部分を少しだけ挿入しただけでは十分に練習の効果が得られないこともあります。そこでオリジナルのダイレーターを考案して作りました。シリコンダイレーターWR(下写真)の優れた所は、「真ん中にあるくぼみのところを持って、持った指が腟の入口につくまで奥まで入れる」という挿入の深さの目安が分かりやすいところです。目標の深さまで挿入できるように、工夫がされているのです。他のダイレーターを使っている方は、だいたい8~10cmまでの深さまで入れるように心がけるといいと思います。まずはゆっくり挿入して慣れることから始めて、慣れてきたら数回出し入れして5-10分間腟の中に入れたままにします。その間はスマホを見たりしてリラックスして下さい。

真ん中のくぼみを持つ
真ん中のくぼみを持つ

もし家族に見られたら、指圧棒と言おう!

セルフトレーニングは自宅でする方が多い為、同居のご家族がいらっしゃる方は家の中にダイレーターを置いておくのが嫌な人もいます。オリジナルダイレーターは見た目がカラフルで何だかわからないし、指圧棒に似ているので、「もし家族に見られて質問されたらマッサージの為の道具と答えてみては」とお話しています。またこのダイレーターは左右太さが違い、1本で2種類のサイズを持ち合わせています。ダイレーターは少しずつサイズを上げていくため、サイズ違いダイレーターを数種類そろえることもあるのですが、これだと半分の本数で済みますね。

シリコンダイレーター
シリコンダイレーターWR
シリコンダイレーターWR_5
左右の太さが違う

クリニックで手術するケース

処女膜切開は誰にでも行っているわけではなく、対象を選んでいます。明らかに処女膜が強靭だったり、狭小な方や、ダイレーターを細い順に入れていってある程度の太さの所でこれ以上拡張ができない方を処女膜強靭症と診断して処女膜切開を行うことが多いです。

処女膜切開は局所麻酔をして電気メスで切開して可動性を作っていく手術なのですが、切除後何もせずに放置しておくと、元の狭さに戻りやすくなります。その為、術後にダイレーターを挿入して術後の広さを維持していくのですが、自分でダイレーターを使って自己拡張ができたほうが効果的です。ですから細いもので良いので、ご自分でダイレーターを挿入することに対して強い恐怖感が無くなるまでセルフトレーニングしていただいてから切開手術をするようにしています。

痛みのトラウマを防ぐためにも

炎症を伴わない方であれば極小の細さのダイレーターの使用では基本的には痛みを伴いません。痛みを伴わないダイレーターの挿入を繰り返し行うことによって痛みのトラウマを予防することができます。

上側が極小サイズ(直径1cm)

練習のポイント、痛い角度を覚えておく

性交痛を感じている多くの方が腟前庭部の4~8時の部分が荒れていてペニスを挿入する際に擦れて痛みを感じやすくなります。

痛みが出やすい場所

ダイレーターを挿入して、この角度で入ると痛い、こういう風だとまだ痛くないということをご自身で把握していただき、痛くない体位、つまりダイレーター挿入時に痛みを感じやすい部分への刺激が最小限になる様な体位の工夫をお勧めしています。基本的には騎乗位での挿入開始をお勧めしています。女性が上半身の角度や腰の位置を調整することで、挿入時にペニスが外陰部に当たる位置や角度、深さをご自身で調整しやすいからです。AVのように騎乗位になった女の人が一生懸命に腰を振らなければいけないわけではなくて、痛くない角度に調整して、男性が下からピストン運動をするのも良いかと思います。
いずれにしても、痛い部分は自分しかわからないので、相手に「こうしてほしい」と伝えることはもちろんとても大切なことですが、自分でも痛くないように調整することも大切です。

黄体期は奥が痛みやすい

排卵の際に卵胞液がお腹の中に溜まったり、卵巣の表面の血管が傷ついてお腹の中に血液が溜まったりすることがあります。また排卵~月経までの約2週間は黄体ホルモンの影響で腸にガスが溜まりやすくなります。この様なことが原因となって、深く挿入するとその刺激で痛みが出やすくなります。

練習はパートナーとできますか?

もちろんです。自分でダイレーターを挿入するのは大丈夫だけど人からされるのはダメという方もいらっしゃいますが、実際のセックスはパートナーと行う行為です。ダイレータートレーニングを自分だけで行うメリットは、自分のペースでできるということですが、パートナーにも協力してもらうことで、女性の痛みの程度やつらさ、どうすると痛くないかが理解してもらいやすくなります。中には自分ではダイレーターのセルフトレーニングができずパートナーにしてもらうのは大丈夫という方もいらっしゃいますが、トレーニングは毎日行った方が効果的なので、ぜひ自分でも挿入できるように少しずつ練習することをお勧めします。

実際のセックスでの活用も

はい、このダイレーターは実際にセックスをするときにも使うことがあります。挿入する際に痛かったり恐かったりすると体がねじれたり、腰が浮いてしまったり、緊張で腟が締まってしまうことがあるのですが、セルフトレーニングでダイレーターを入れて大丈夫だったという確証があると、挿入時に不安が少なくてすみます。また実際にセックスをする際にもダイレーターを挿入して10分ほどそのままにしておくと、腟の筋肉が緩むので、緩んだところでダイレーターを抜いてペニスを挿入してもらうとスムーズにペニスを挿入することができます。

まとめ

こばやし

皆さんいかがでしたでしょうか。誰しも腟に何かが入ると思うと、自然とからだが多少はこわばってしまうもの。そのコントロールは人によっては意外と難しいことも。自宅でできるダイレーターを使ったセルフトレーニングは、自分のペースで、自分で入れることで心の準備が整ったり、どこが痛いか把握ができたり、また実践では挿入できた証として安心させてくれたり、しばらく入れておくことで筋肉を緩ませてくれたり、バリエーション豊かに活用できるということがわかりました。ダイレーターはまさに痛い人の愛棒になりそうです。

咲江先生、お忙しいなか取材にお答えいただき本当にありがとうございました。咲江レディスクリニックの診察は完全予約制です。来院をご希望の方は、ホームページで予約方法をご確認ください。咲江先生オリジナルのシリコンダイレーターWRは、下記から購入可能です。

シリコンダイレーターWR

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WHOなどの国際機関が定める「性の健康」の概念に着目し、私たちの編集部は「痛みのない、喜びのある性生活のためにー」をモットーに掲げています。総医療監修の医師をはじめ各方面の専門家との協力を通じて、性交痛に関する信頼性の高い情報を提供しています。私たちは性の健康に対する理解を深め、読者が充実した性生活を享受できるよう、包括的で専門的なコンテンツをお届けしています。