処女膜について理解しよう

「初体験は処女膜が破れるから、出血するし、とても痛い。」多くの人がなんとなく聞いてきたことではないでしょうか。しかし、これこそが都市伝説的誤解です。性的な体験をする前にその伝説が耳に入っていると、これから「血がでるほどの痛い思い」をしなくてはいけないという恐怖心に支配されてしまいます。そう思いながら初体験を迎えることは、本当に怖いことですよね。

処女膜についての事実を学ぶ機会がなかった私たちは、出どころが不確かな情報を信じてしまいやすいし、この分野での信頼性のある情報が限られていることも確かです。

YouTubeでSHELLYさんが処女膜について解説する動画(FuanFreeにも登場した産婦人科医で性教育活動を行う高橋幸子先生が監修)は、処女膜にまつわる誤解を解く上での大切な情報源です。私たちもFuanFreeの視点で、正確な情報を提供し、読者の皆さんが不安や誤解から解放され、性体験に対する不安を軽減し、健康的な選択を支援するために、お伝えしたいと思います。また処女膜の説明ではよく「破れる」という表現を使いますが、膜ではないのでここでは「切れる」と表現したいと思います。

SHELLYのお風呂場【処女膜を知れば世界が変わるーかもしれない!?のお話】

処女膜について

処女膜とは、女性の腟の入り口に位置する薄いヒダ状の粘膜組織です。この組織は、腟口を取り囲むように存在します。ドクター訪問記では村田佳菜子先生が「排水溝のゴム蓋のような」、SHELLYさんはヘアバンドのシュシュと表現していましたね。どちらの表現にもあるように、ゴムとまでいきませんが伸び縮みする粘膜組織です。

先天的な構造の例
性器の構造

形状、厚さは人それぞれ

個人や年齢によって形、厚さ、硬さ、弾力性、そして伸縮性が異なります。

切れるタイミング、初体験だけ?2回目も?

初体験など性行為限定で切れるわけではありません。処女膜は腟の入り口付近にあるので、スポーツや日常の動作や性的な経験によっても気が付かないうちに切れていることもあります。組織の伸展性が高ければ、性行為をしても全く切れないこともあります。また初体験で切れなくても、激しい摩擦などが起きたときに切れる可能性があります。

出血はどのくらい?

「シーツが血で汚れる」というイメージが一般的かもしれませんが、処女膜は血管が比較的少ない膜であるため、破れたとしても大量の出血はほとんどありません。また、かなり多めの出血でシーツが汚れてしまった場合は、何かの病気が隠れている可能性があるので医療機関の受診をおすすめします。

性経験の有無は処女膜で判断できる?

性経験の有無は処女膜では判断できません。処女であること、性経験の有無は医師でも判断できないことが、小規模な研究ではありますが論文※で証明されています。

性経験がなくて自信がない。処女であることが他者にわかるのが心配。逆に性経験の豊富さを知られたくない。それらの心配はしなくて大丈夫です。性経験がなくても、性経験が豊富でも、あなたのからだはあなたのもの。あなたの人生はあなたのもの。あなたの人生を決めるのはあなた。自分の意思を大切できることが何よりだと思います。

処女膜にみられる症状

処女膜にみられる代表的な症状は以下の2つです。閉鎖症は月経が始まる年齢の頃に多くが気付くことができます。どちらの症状も稀なケースと言われていますが、診断されれば保険適用で治療ができます。また処女膜に近い腟の入り口やその周辺で感じる、混同しやすい痛みには、腟前庭部痛や腟けいれん(ワギニスムス)が含まれます。

  • 処女膜閉鎖症
  • 処女膜強靭症

この2つは、構造的な症状で解説しています。

  • 腟前庭部痛
  • 腟けいれん(ワギニスムス)

この2つは、ドクター訪問記Vol.2番外編で、村田佳菜子先生が解説しています。

なぜ誤った情報が広まっているのか

処女膜に対する不正確な情報や都市伝説は、社会的なタブー、文化的な制約、医学的な誤解、性教育不足、オンラインでの偽情報、文化的な信念など、複数の要因によって生み出され、広められています。

さらに、処女膜について疑問を抱き、調べようとしても、情報は多くありません。この状況も処女膜に関する誤解や誤った情報が広まりやすい一因と考えられます。

性に関する正確な知識は、健康と幸福に大きな影響を及ぼします。今後は、性教育や医療機関などの信頼性のある情報源を通じて、正確な情報が一般に普及していくことを期待しています。

もし、処女膜のことで悩んでいたら

まずは産婦人科で診てもらい、構造的な問題や病気などの検査をして、異常がないと診断されても、納得がいかない、継続して挿入で痛みがある場合は、日本性科学会が認定するセックスセラピストの資格を持つ専門医の受診も選択としてあります。

性の健康一言メモ
性の健康一言メモ

自分の性の在り方から離れて生きられる人はいません。性の在り方はその人を形作るもののひとつです。生まれつき持っているもの、生まれてからこれまでに経験してきたもの、身に着けてきたもの。そういうひとつひとつが今のあなたを形作って、唯一無二の大事な存在であるあなたがここにいます。だからこそ、自分は何が好きか、何が嫌か、誰とどう生きていきたいのか、その人とどういうセックスをしたいのか、自分の本心を確かめてみてください。他者とのコミュニケーションは、自分のことをどれだけ分かっているかによって豊かさが変わります。セックスも大事なコミュニケーションであり、パートナーとのセックスの前に自分の本心が分かっているといいと思います。

※参考文献
Nancy D Kellogg, Shirley W Menard, Annette Santos(2004) Genital anatomy in pregnant adolescents: “normal” does not mean “nothing happened” 取得日 2023年8月

Ranit Mishori, Hope Ferdowsian, Karen Naimer, Muriel Volpellier, and Thomas McHale (2019) The little tissue that couldn’t – dispelling myths about the Hymen’s role in determining sexual history and assault 取得日 2023年8月

ABOUT US
ふあんふりー編集部
ふあんふりー編集部FuanFree
WHOなどの国際機関が定める「性の健康」の概念に着目し、私たちの編集部は「痛みのない、喜びのある性生活のためにー」をモットーに掲げています。総医療監修の医師をはじめ各方面の専門家との協力を通じて、性交痛に関する信頼性の高い情報を提供しています。私たちは性の健康に対する理解を深め、読者が充実した性生活を享受できるよう、包括的で専門的なコンテンツをお届けしています。