処女膜強靭症、腟萎縮、性交痛の自費診療の治療について喜田直江先生が解説

こばやし

性交痛の治療で大きな壁は、詳しい医師が少ないこと。性交痛を診る医師やクリニックは、他とどう違うのかを比較するのではなく、診療にあたるその医師の姿勢や視点をお送りして皆さんなりに判断してもらえる材料になればと思い、シリーズ化してお伝えします。

第5弾の今回は、一般には馴染みのない「婦人科形成」という分野で、女性の性器の悩みを解消する医療を提供するなおえビューティークリニックの喜田直江先生にお話を伺います。

お話を伺った先生

なおえビューティークリニック院長
喜田直江先生
(東京都中央区)

産婦人科医として多数の分娩・手術症例を経験後、形成外科医として技術を習得したのち、さらに美容外科・美容皮膚科全般を習得。現在は婦人科系の形成医療を中心に保険診療では解決できない婦人科系のお悩みの解決をおこなう。

【略歴】
平成13年 京都府立医科大学卒業後、産婦人科医として多数の分娩・手術症例を経験。
平成15年 形成外科医として、形成外科の基本から縫合の技術まで幅広く習得。
平成18年 大手美容外科にて美容外科・美容皮膚科全般を習得。
とくに婦人科系の美容手術は、日本でも有数の症例数を誇る。
平成23年10月 東京銀座でなおえビューティークリニックを開院。

【所属学会】
・日本形成外科学会会員
・日本性科学会会員
・日本抗加齢医学会会員
・ビビーブ認定医

写真提供:なおえビューティークリニック

婦人科形成クリニックとは

「婦人科形成」「美容婦人科」といったりしますが、婦人科で治療できない婦人科領域の治療をしています。保険で対応できないことを治療している場所です。

保険の適用外のため病気ではなくて美容の範疇と思われてしまうこともありますが、私は顔の美容とは違うと思っています。婦人科での保険適用内での治療では、性交痛の人へのホルモン錠剤の処方はできますが、それ以上のことができません。保険適用では対応しきれない婦人科系の悩みに対応しています。

性交痛は保険適用になるものとならないものがあります。更年期の性交痛については保険でできる範囲が決まっていて、女性ホルモンの腟剤を出したりはできます。レーザーで治療するとなると保険ではできなくなります。

編集部メモ

更年期で女性ホルモンが減少するために起こる性交痛、病気や炎症、構造的な問題などが認められる明らかな処女膜強靭症などが原因の性交痛は保険適用になる一方、それ以外の性交痛は自費診療になります。

診察ができる性交痛の種類

基本的にすべての性交痛を診ています。処女膜が突っ張っている、更年期の萎縮が原因、うるおいが足りていないときの指導など、幅広いです。

性交痛の診察

まず患者さんのお話を聞きます。お話を聞くと色々分かってきます。処女膜に原因があるのかなと思われる場合は診察してみないと分からないので、診察で膜の状態や力の入り具合、恐怖心の大きさなどをみていきます。

更年期による萎縮の場合も同じです。まずは診察して腟壁の萎縮の進行具合や、どのくらい広がるのかなどをみます。そのうえでその人の状態に合わせた治療を考えていきます。

なお、器具は使わず、ジェルなどを使いながら指で診ていきます。

内診が怖い場合の対応

どうしても内診が無理な方には、おうちで自分の性器をみて触る練習をして、自分の指がいれられるようになったら診察に来て下さいということもあります。

「見て・触れる」ようになることは生活するうえでも絶対に必要なことをお伝えして、理解してもらって練習してもらいます。ほとんどの方はそれで診察できるようになります。

性器の形や触った感触が理解できれば、恐怖心は落ち着きます。知らないから怖い・知れば全然怖くない。だから「知る」ことを知ろうよという考えです。

ただ、どうしても診察が難しい方も時々いらっしゃいます。そういう場合はまず専門のカウンセリングをご紹介します。

完治までの通院回数

あくまで目安の話ですが。更年期の場合は治療をしていくうちにどんどん良くなっていき、良くなったと実感できるのは2ヶ月くらい経過してからです。3〜4ヶ月で性交渉できるようになります。時間がかかる方の場合は半年くらいかかることもあります。また、通院は、その人の状態によって違うものの、だいたい月に1回ペースです。

処女膜切開の手術をする場合は、基本的には手術して気になることがなければ再診も不要です。早い方の場合は術後1ヶ月で性交渉できるようになります。

ただ、処女膜強靭症の方は処女膜だけが原因という人は少なくて恐怖心を持っている方が多いので、そうすると手術した後もすぐには性交渉できません。数か月間ダイレーターを使うなどして怖さを取り除くための練習をしてもらうことになります。練習している間は練習法を指導したり経過をみたりします。練習しても全然ダメという例は今のところないので、ほとんどの場合ちゃんと性交渉できるようになっているのではと思います。

ちなみに独学で練習していると、間違った方法で練習してしまっていることがあります。大事なポイントを誤解している人もいらっしゃいます。専門家から基礎を学んでから練習するのがいいと思います。

処女膜強靭症処女膜に置ける「強靭」の定義はある!?

「ここからここが強靭症」という定義はありませんが、ただ婦人科では強靭症だと診断してもらえず、ちょっと広げて指2本入れば「大丈夫だよ」と診断されることも多く、問題が解決されない患者さんが来られます。

強靭症の場合、「手術」「マッサージをしながら様子を見る」をはじめ、様々な選択肢があります。私は、まず診察して、その後どうしていくかを判断します。その方の処女膜の状態や生活状況(「すぐに子どもが欲しいが高齢で時間がない」など)を考慮しつつ、相談しながら決めていきます。

処女膜強靭症の切開手術後にも痛む場合

手術した後にまだ痛いという人は多いです。手術前に「手術だけでは性交渉できるようにはならないよ」と話はしています。パートナーの協力がある場合は性交渉ができるようになるまで早いです。

切開手術後にもダイレーターを使った練習をしてもらう場合もあります。術後の練習にかかる時間は人それぞれですが、練習でほぼ皆さんが性交渉できるようになっています。また、ダイレーターの挿入が怖くて練習できない人にはカウンセリングをご紹介します。

心因性の性交痛は、気づきにくいのか

「カウンセリングが必要ですね」とお伝えすると「やっぱりそうですよね」となります。恐怖心が大きいと自覚していらっしゃる方が多く、心因性もあることを納得されます。狭いところに入ると恐怖感が出る閉所恐怖症のように、そういう方は身体に何かが入ってくることに恐怖を感じます。耳かきもできません。そのため、腟に何かを入れる練習の時にも抗不安薬などを処方してもらう必要があるので、専門のクリニックへお願いしています。

挿入時の小陰唇巻き込みで起きる性交痛

小陰唇が大きい場合、例えば下着からはみ出たり、椅子に座っている時にひだの上に座っている感じで挟まって痛いと感じます。自転車に乗る時も同様です。性交渉のときだけでなく、普段から何かしら違和感があると思います。
大きいのは病気ではないので、小陰唇の手術は保険適用ではないんです。手術は大きくなっているところを切り取って縫合する感じです。綺麗に縫うので切除した箇所はつるんと綺麗になります。片方だけ長い人もいれば、両方長い人もいます。片方だけの人は片方だけ手術します。遠方の方は、予約時に「カウンセリングの当日に手術したい」と希望を相談してくれれば、初回の来院時にカウンセリングを行い、そのまま手術も可能です。通院なしでこの1回で終わりということもできます。

直江先生の性交痛に関しての考え方

性交痛を相談しようと思っても同じ境遇の人と巡り合うのは難しいし、誰かに相談しても「最初だけだよ」とまともに取り合ってもらえない。これは医師も同様で、産婦人科のお医者さんもしっかり処女膜とかまで診ないで、「指2本入るから問題ないよ」「最初だけ痛いから我慢してね」とジェルを渡して終わり。そういう経験をして諦めちゃっている人もいます。そういう方に、治療できるんだよって知ってもらいたいですし、産婦人科の先生たちにも知ってもらいたいです。

性交痛は立派な病気

性交痛は立派な病気です。性交渉が当たり前のようにできる人にはわからないですが、当たり前のようにできることができないのは、本当につらいですよね。治療できることは大切です。

更年期の方が性交痛の相談に来られると、最初に「この歳になって恥ずかしいんですけど」と言うんですね。全然恥ずかしいことではないです。恥ずかしいと思わせてしまっているこの世の中がまだまだだなと思います。そういうところから変えていかないと、痛くて悩んでいて相談したいけどできないって人はずっとそのままになってしまいます。

相談に来て治療して良くなれば人生がガラリと変わるじゃないですか。それをしないで我慢しているのはもったいない。年齢も関係ないし、恥ずかしいことでもない。周りに非難されることでもない。でも前に聞いたのは婦人科の男性医師に性交痛の相談をしたら「その歳なんだから、もういいでしょ」といわれたと。そうじゃないでしょ!婦人科の先生みんながそうではないけども、まだまだそういう先生はいらっしゃいます。こういうことが相談しづらい環境を作っていますよね。それを変えていきたいです。

取材と編集を終えて

こばやし

婦人科系の悩みなのに保険適用外だから普通の婦人科では治療できない。それを扱うのが直江先生のような婦人科形成、美容婦人科といわれる自費診療のクリニックです。産婦人科医としてスタートした直江先生が、産婦人科の臨床現場で患者さんの悩みを解決できなかったもどかしい思いから、専門技術を習得して立ち上げたクリニック。「性の悩みに年齢は関係ないし、恥ずかしいことでもない。そう思わせる社会を変える」、という先生の言葉に女性の「性の健康」を守る精神を感じました。また処女膜のつっぱりなど婦人科ではなかなか気づいてもらえないようなケースを多く診られていることから、処女膜強靭症のお話が多かったですが、クリニックでは性交痛全般、診察をされています。

直江先生、お忙しいなか取材にお答えいただき本当にありがとうございました。なおえビューティークリニックの来院をご希望の方は、ホームページで予約方法をご確認ください。

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ふあんふりー編集部
ふあんふりー編集部FuanFree
WHOなどの国際機関が定める「性の健康」の概念に着目し、私たちの編集部は「痛みのない、喜びのある性生活のためにー」をモットーに掲げています。総医療監修の医師をはじめ各方面の専門家との協力を通じて、性交痛に関する信頼性の高い情報を提供しています。私たちは性の健康に対する理解を深め、読者が充実した性生活を享受できるよう、包括的で専門的なコンテンツをお届けしています。